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# 2.1 オルタナティブな通貨のデザイン

エスコバルによれば、西洋的な資本主義経済は、人間と非人間（自然）、主体と客体、精神と身体といったものを厳密に切り離す「存在論的二元論（ontological dualism）」を基盤として構築されてきました。その視点に依拠する人類学者のアルフ・ホーンボルグは、「多中心的な経済・通貨システム」の再設計を提唱しています。現在、私たちが当然のように活用している通貨システムは、自然を無尽蔵の「資源」として捉えることを心理的・社会的に正当化する道具であり、人間が本来持っている多様な生のあり方や、自然との相互依存関係を忘却させ、単一市場の論理に従属する主体をデザインしてしまっていると批判しています。ホーンボルグが理想とするのは、「関係性の網の目」を修復し、強化する性質を持った通貨です。具体的には、地域内での「社会的代謝（social metabolism）」を自律的に維持・管理するために現行通貨と同時に使用できる「補完通貨（Complementary Currency）」というものが提案されています。FoRの設計思想は、ホーンボルグの発想に強く関連しています。

一方で、ラナ・スワーツは、著書『New Money: How Payment Became Social Media』において、通貨を「コミュニケーション・メディア」として捉え直し、現代の決済システムがどのように私たちの社会的なつながりやアイデンティティを再構築しているかを分析しています。彼女は、法定通貨を「マス・マネー・メディア」と呼び、国家が国民全体という巨大な「トランザクショナル・コミュニティ（取引共同体）」を形成するためにデザインされた公共インフラだとしています。対して、現代の決済アプリやプラットフォーム独自の通貨（スターバックスのポイントやビットコインなど）は「ソーシャル・マネー・メディア」として機能しています。これらは小さなグループにカスタマイズされた「複数的な貨幣」です。私たちは「どのように支払うか」によって、自分たちが何者であり、どこに属しているかを表現しています。これを彼女は「トランザクショナル・アイデンティティ」と呼び、「貨幣は単なる交換ツールではなく、誰がその社会に参加でき、誰が価値があると見なされるかを決定する、強力なソーシャルメディアである」と定義しています。「複数的な貨幣」という捉え方は、ホーンボルグの多元的世界における補完通貨という発想とも通じ、その実装のためにデジタル技術を活用可能性を示しています。

さらに、Escobarの多元世界を別の角度からみると、資本主義以前、あるいは並行して存在してきた価値交換のメカニズムを参照することも可能です。伝統的な人類学の知見（マルセル・モースの贈与論などに代表される）によれば、「贈与」と「負債」という動態は、現代の私たちが自明視する法定通貨の性質が、いかに偏ったものであるかを示しています。贈与交換という仕組みにおいては、モノの移動に伴って贈与者の人格や霊魂が移動し、受け取ったものに返礼の義務を生じさせるという特徴があります。現代の法定通貨が、取引が完了した瞬間に当事者間の関係性を清算し、切断するようにデザインされているのに対し、この「互酬性」とも呼ばれる相互のやりとりは、当事者間の永続的な「関係性の構築と維持」を目的としています。これは、通貨が現状の私たちが当然だと思っている機能だけでなく、特定の「関係性の質」を担保するような機能を持つことの可能性を示唆しています。

通貨に関する存在論、メディア論、文化人類学の議論は、一つの結論へと収斂します。それは、通貨とは本質的に「社会を編むためのメディア」であり、それを自律的に再設計することは、市場経済の外部性を克服し、自然との関係性を組み替えるための多元的なデザイン実践になり得るということです。換言すれば、私たちが「誰とつながり、何を大切にするか」という社会の台帳を自分たちで書き換える試みであると同時に、自分たちの「トランザクショナル・アイデンティティ」を自分たちで構築するためのメディア実践であるともいえるでしょう。

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**参考文献**

* Hornborg, A. (2024). Defetishizing money: Perspectives from economic anthropology: Gudeman Lecture, University of Minnesota, March 20, 2023. *HAU: Journal of Ethnographic Theory*, *14*(2), 310–324. [https://doi.org/10.1086/731656](https://www.google.com/search?q=https://doi.org/10.1086/731656)
* Hornborg, A. (2025). Limiting money: Redesigning the artifact that shapes modern people. *Sustainability Science*, *20*(4), 1185–1193. [https://doi.org/10.1007/s11625-024-01491-y](https://www.google.com/search?q=https://doi.org/10.1007/s11625-024-01491-y)
* Swartz, L. (2020). *New money: How payment became social media*. Yale University Press.
* マルセル・モース. (2014). 『贈与論 他二篇』 (森山工訳). 岩波書店.


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